犬や猫において椎間板ヘルニア(IVDH)をはじめとした、神経外科疾患は頻繁にみられます。
IVDHは椎間板物質が突出あるいは逸脱し、脊髄を圧迫する神経外科疾患です。
IVDHは、ヘルニアの発生した背骨の部位によって、
頚部椎間板ヘルニア(C-IVDH)と、胸腰部椎間板ヘルニア(TL-IVDH)に分けられ、
症状も異なります。
頚部は背骨の頚椎部分で、胸腰部は背骨の胸椎から腰椎にかけての部分です。
IVDHは症状の程度により、グレード分類がなされています。
C-IVDHとTL-IVDHとではグレードの分類が異なります。
〇C-IVDHのグレード分類
グレード1. 初発の頚部痛
グレード2. 繰り返す頚部痛または自力歩行可能な不全麻痺
グレード3. 自力歩行不可能な麻痺
C-IVDHは、お宅でワンちゃんを抱きかかえた際にキャンと鳴いた、
または直接触れなくてもキャンと鳴いて動きたがらないという症状で
来院される事がほとんどです。
(一般的に動物はお腹が痛くてもキャンと鳴くことはあまりみられませんので、
キャンと鳴き動きたがらない場合は、整形外科疾患や神経外科疾患の可能性があります。)
〇TL-IVDHのグレード分類
グレード1. 背部痛
グレード2. 歩行可能な後肢不全麻痺
グレード3. 歩行不可能な後肢不全麻痺
グレード4. 自力排尿不可で後肢完全麻痺
グレード5. 深部痛覚消失した後肢完全麻痺
TL-IVDHは、C-IVDHと同様にキャンと鳴いたり、後肢のふらつきや、
動きたがらないとの症状で来院されます。
C-IVDHおよびTL-IVDHの診断には、血液検査、レントゲン検査、
神経学的検査が必要です。
確定診断をするためにはいくつかの方法がありますが、
当院では画像検診センターでMRI検査をお願いしています。
MRI検査をすることで、IVDHと確定診断することが出来るほか、
ヘルニアの部位や脊髄損傷の程度などを診断することが可能です。
治療法は内科療法と外科療法に分けられ、治療法を選択する上で、
グレード分類が重要となります。
内科療法は消炎鎮痛剤の投与と、運動の制限が基本となります。
C-IVDHの場合グレード2以上で外科療法が必要です。
TL-IVDHの場合グレード3以上で外科療法が必要ですが、
当院ではグレード2でも内科療法に反応しない場合や、
MRI検査で脊髄への圧迫が重度である場合などは外科療法をおこなっています。
本日もMRI検査でC-IVDHと確定診断した犬の外科治療を行ないました。
手術方法はベントラルスロット法という方法で、頚部の正面から切開し、
頚椎の椎間部分を切除して脊髄の圧迫物質を摘出しました。
※以下、手術中の写真の為、苦手な方はご遠慮ください。
※黄色いフィルムはヨードを含む無菌的なフィルムで手術部位を無菌的に管理するためのものです。
頚部を正面から切開し、筋肉を分けて気管や食道、重要な神経、血管などを露出します。
外科用ドリルを使用して頚椎に小さな孔(スロット)を作成します。
作成したスロットから脊髄の圧迫物質を摘出し、手術終了です。
手術中にレントゲンを撮影し、スロットを作成する部分の確認などが必要なため、
様々な機器が必要な手術です。
一人では行えない手術です。
痛み止めを使用した安全な麻酔管理、
手術助手とのチームワークがあって手術が行うことが可能です。
当院ではより質の高い医療を提供するために、
設備機器の充実、スタッフ同士のチームワークを大切にしています。
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