鈴木犬猫病院

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神経外科

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医療技術の発展により神経疾患の診断が飛躍的に

近年では獣医療でもCTやMRIなど高度医療機器を利用した検査が行えるようになっています。
これにより、脳や脊髄など中枢神経の検査が可能になりました。神経の病気には生命を脅かすような重篤な症状の原因になるものや、麻痺などの後遺症により生活の質に影響するものなど様々です。言葉を話す事ができない動物の痛みや苦しみを解明し、治療を行っています。

より良い治療を行うために

神経疾患の治療には内科から外科まで幅広い知識と経験が必要です。日常生活への復帰にはリハビリテーションなどの理学療法が有効になることも。脊髄疾患の治療では、安全に手術を行うために特殊な超音波手術機器も使用します。当院では長年の治療実績をふまえて診断から治療まで幅広いケアを心がけています。高度な検査が必要な場合は画像検査センターを利用していただいています。

神経疾患診察の流れ

来院

当院は完全予約制ではありません

病気によっては麻酔下での特殊検査が必要になる場合があります。
絶食絶水が必要ですので来院前にお問い合わせください。

問診

臨床症状、歩様・起立位視診

いつから症状がみられたのか、初めての症状なのか悪化しているかなどを詳しく問診をおこない、鑑別診断をすすめます。

検査

身体検査(神経学的検査、整形外科学的検査)、血液検査、X線検査、MRI検査、CT検査、脳脊髄液検査

・血液検査
神経学的異常の原因には全身性の代謝疾患や感染症、免疫介在性疾患の場合があります。
原因を特定するために血液検査をおこなう必要があります。一部血液検査は外部検査施設に検体を送る場合があります。
・X線検査
骨折や脱臼など、骨の異常がみられる疾患の診断を行います。
・MRI検査
一般臨床検査、神学的検査を行い、中枢神経の疾患が疑われる場合にはMRI検査が必要です。
画像検査センターにてMRI検査を行い、疾患の特定して診断します。全身麻酔が必要な検査です。
・脳脊髄液検査
診断には脳脊髄液中の細胞や蛋白の検査が必要な場合があります。
MRI検査に合わせて行います。全身麻酔が必要な検査です。

治療

外科治療/内科治療/支持療法

代表的な神経外科疾患

  • 椎間板ヘルニア
  • 変性性腰仙椎狭窄症(馬尾症候群)
  • 環軸椎不安定症

環軸椎不安定症(AAI)

環軸椎不安定症とは、第一頸椎(環椎)と第二頸椎(軸椎)との間でみられる不安定症によって脊髄を損傷する神経外科疾患です。

環軸椎不安定症の原因は先天性と後天性があります。先天性の場合は軸椎の骨格異常や、環軸椎関節の靭帯の異常などがあります。後天性の場合は頸部の激しい動きや交通事故などの外傷によって起こります。後天性の方が脊髄の損傷が大きく、死亡してしまうこともあります。

イメージ

左写真の青矢印の部位が環軸椎です。

イメージ

CT検査では左の画像のように立体的な頸椎の形がわかります。
緑色矢印の部分が軸椎の歯突起という部位で、環軸椎不安定症では軸椎の歯突起が脊髄を損傷します。

治療方法

内科療法

非ステロイド消炎鎮痛剤

運動制限

装具

サプリメント

外科療法

椎体固定手術

外科治療

手術前
手術前
手術後

手術後

インプラント(スクリュー、骨セメント)を使用して不安定な環軸椎関節を固定します。

椎間板ヘルニア(IVDD)

椎間板ヘルニアとは、脊椎の間のクッションである椎間板が脊髄を損傷する神経疾患です。 椎間板ヘルニアにはハンセンⅠ型とハンセンⅡ型があります。椎間板ヘルニアの好発犬種であるM・ダックスを代表とする軟骨異栄養性犬種(ビーグルなど)はハンセンⅠ型ヘルニアを発症する場合が殆どです。 ハンセンⅠ型では急性発症し、ハンセンⅡ型の多くは慢性的な痛み、歩行異常がみられます。

イメージイメージ左のMRI画像は頸部と腰部の椎間板ヘルニアが認められています。
背骨の中にある脊髄はMRI検査によって検査が可能です。

1. 症状の経過を問診します

歩様検査、神経学的検査により椎間板ヘルニアの重症度分類を行います。

臨床評価 症状 治療適用
グレードⅠ 腰背部疼痛のみ 内科的治療
グレードⅡ 歩行可能だが、ふらつき 内科的治療/外科的治療
グレードⅢ 起立・歩行困難 随意運動あり 内科的治療/外科的治療
グレードⅣ 起立・歩行困難 随意運動なし 排尿障害あり 外科的治療
グレードⅤ 深部痛覚の消失 外科的治療/外科不適応

2. 内科的治療

  • 体重管理
  • 運動制限
  • 抗炎症・鎮痛剤
  • サプリメント・ビタミン剤
  • リハビリテーション:レーザー、マッサージ、運動訓練、装具など

3. 外科的治療

内科的治療・支持療法では効果が認められないグレード2以上の重症度では外科的治療が適用になります。


超音波手術装置


神経外科高速ラウンドバー

  1. 1

    頸部腹側減圧術(Ventral Slot)
    頸部椎間板ヘルニアで頸部正中より頚椎体に孔を作成して椎間板物質を取り除きます。

  2. 2

    片側椎弓切除術 (Hemilaminectomy, Corpectomy)
    頸部・胸部・腰部の椎間板ヘルニアでは背部より椎弓と呼ばれる背骨の一部を切除し、脊髄を圧迫障害している椎間板物質を取り除きます。圧迫を受ける部位やヘルニアの形式によってHemilaminectomyまたはCorpectomyを選択します。

  3. 3

    背側椎弓切除術 (Dorsal laminectomy)
    片側椎弓切除術では椎弓の片側を切除しますが、背側椎弓切除術では椎弓全体を背側より切除します。
    脊柱管内の腫瘍や、変性性腰仙椎狭窄症の治療で選択します。

4. 進行性脊髄軟化症

グレードⅤでみられる痛覚消失をともなう、重症度椎間板ヘルニアでは、脊髄への損傷が大きく、神経細胞の壊死により脊髄が軟化してしまう進行性脊髄軟化症を発症する場合があります。発症してしまうと、外科的治療の有無とは関係なく7日以内に呼吸筋麻痺により死亡してしまう事があります。

変性性腰仙椎狭窄症(馬尾症候群)

馬尾症候群とは腰仙椎の椎間板物質の圧迫、腰仙椎の狭窄や不安定症などによって馬尾領域の神経が圧迫障害されて起きる症状の総称です。尾側腰椎(第6以降)部では脊髄は細かな神経群に分かれており、これが馬の尾状に見えることから馬尾領域と呼ばれています。馬尾領域の神経には坐骨神経や陰部神経、尾神経などの末梢神経が存在し、馬尾領域の神経障害では後肢の不全麻痺や尾の麻痺、排泄障害などの症状がみられます。

中高齢のジャーマンシェパードやラブラドールに好発しますが、近年小型犬にも多く認められています。不全麻痺を伴わない腰仙椎部の疼痛のみを症状とする場合もあります。